緑風会昭和町クリニック

物忘れについて

物忘れについて

老化による物忘れと病気による物忘れ

昨日の夕食の内容を尋ねられた時に夕食の内容はすべて答えられないが、ヒントがあると思い出すことができる。このように体験したことの一部のことを忘れるがヒントがあれば思い出したり、忘れたことを自覚している場合、これを老化に伴う正常の物忘れです。

ところが夕食を食べたか食べていないかがわからなくなる。このように体験したこと自体を忘れ、ヒントを出しても思い出せず、忘れたことの自覚もない場合、これは認知症等の病気に伴う異常な物忘れです。初期症状としてこのような物忘れが現れる病気と現れにくい病気もありますので注意が必要です。

軽度認知障害(MCI)について

健常者と認知症の人の中間の段階(グレーゾーン)にあたる症状に、軽度認知障害(MCI)があるといわれています。MCIとは主に正常老化以上の記憶障害が存在しますが日常生活には支障がない状態のことです。以下がMCIの定義になります。

軽度認知障害(MCI)のイメージ
  • MCIの定義
    • 記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
    • 日常生活動作は正常
    • 全般的認知機能は正常
    • 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
    • 認知症ではない

    (Petersen RC et al. Arch Neurol 2001)

これが認知症の中間の段階にあるというのは、1年間に毎年約10%のMCIの方が認知症に移行すると報告されている点です。MCIの段階で生活習慣を含めたライフスタイルを見直すことなどで認知症への進行を予防できる事が報告されていますので、物忘れも早期発見・早期対応が重要です。

認知症治療について

アルツハイマー型認知症のように脳の神経細胞がダメージを受け、記憶力が低下する、いわゆる「認知症」は現在の医療では完治することはできず現在の状態を維持することを目標に治療が行われます。
しかしながら、神経梅毒(梅毒スピロヘーターが神経に直接侵入しておこる病気)や甲状腺疾患、慢性硬膜下血腫(外傷などが契機となって脳の硬膜と脳の間に血が貯まることによって起きる)などでも物忘れを中心とした認知症と似た症状を引き起こすことが知られています。

認知症治療のイメージ

これらは原疾患を治療することによって症状が完治することもありますので血液検査や頭部CT、MRIなどでこれらの疾患が隠れていないか検査していくことも重要です。

― 最後に ―

認知症は2012年時点で約462万人、MCIは約400万人と推計されており、65歳以上の高齢者のうち4人に1人が認知症とその予備軍といわれています。

MCIから認知症を進行しないような予防も大切です。また、認知症になっても「薬を飲めばそれで安心」ではありません。身体面でも精神面でも様々な問題が生じてきます。そのような問題をご家族、介護スタッフ等みんなで知恵を出し合って解決し認知症になってもその人らしさを維持できるようお手伝いしてまいりたいと思います。

医療法人緑風会

093-653-2534